定められた定義に基づいて集計される国の社会保障の費用。ILO(国際労働機関)は、1949年以来、各国共通の基準により社会保障の費用と財源に関する調査を続け、統計書を刊行してきた。その後、社会保障の費用規模が大きくなるにつれOECD(経済協力開発機構)も社会保障の費用に関する統計を整備し、社会支出として発表するようになる。ILOの社会保障費では、社会保障の給付費と管理費、それらに対する財源の内訳も集計しているが、OECDの社会支出では、施設整備費などを含むより広い範囲の支出が集計される。日本では、国立社会保障・人口問題研究所が、両基準に基づいて社会保障給付費と社会支出の統計を毎年更新して発表している。ILO基準での社会保障費の集計は手間がかかるため、各国のデータが揃いにくくなっており、各国の社会保障費用の比較には、OECDの社会支出を用いることが多くなった。
2015年度の日本の社会支出119.2兆円(対GDP比22.4%)に対し、社会保障給付費は114.9兆円(対GDP比21.6%)である。また同年度の社会支出を主要国と比べると、対GDP比でアメリカ19.1%より高く、イギリス22.8%と同程度で、ドイツ、スウェーデン、フランスなどとは4ないし9ポイントの開きがある。