介護労働者の賃金は低く、2007年の厚生労働省の調査では、きまって支給される現金給与月額で比較すると、全産業平均37.24万(男)、24.17(女)に対し、福祉施設介護職員は22.59万円(男)と20.44万円(女)だった。こうした賃金では、介護の仕事を長く続けることはできず、有能な職員が介護現場を去り、またその欠員も補充できない。介護現場の離職率は高く、平均勤続年数も短い。賃金が低い主な理由は、政府が介護費用を抑制するため介護サービスに対して介護保険が支払うサービス単価(報酬)を切り下げてきたからである。介護報酬は3年ごとに改定されるが、2003年(-2.3%)と06年(-2.4%)の過去2回の改定ではいずれも引き下げられてきた。09年度の改定では政府ははじめて約3%の報酬引き上げを決め、介護労働者の賃金を月2万円程度引き上げたいと考えていたが、10年1月発表の厚生労働省の調査結果によると、09年9月時点の平均給与(23万1366円)は、08年9月と比べて9058円増にとどまった。なお、介護報酬の引き上げが保険料の引き上げに跳ね返るのを軽減するため、100%国費でまかなうとした。また、12年度の改定では、引き続き賃金の月額1万5000円増の維持のため、新たに介護報酬に「処遇改善加算」を新設。11年度の賃金を下回らないなどを前提に事業者に加算が認められる(15年3月まで)。15年度改正では、現行の仕組みは維持しつつ、待遇改善に取り組んだ事業所についてはさらに報酬を上乗せし、職員1人あたり1万2000円相当の賃上げを実現するとする。