社会から排除され孤立している貧しい人々を、さまざまな社会資源を動員して同じ社会の構成員として社会全体で包み込み支え合おうとする考え方。「社会的包摂」と訳される。ヨーロッパでは、宗教や文化を異にする移民労働者や少数民族の人々等が、常態化した貧困から脱却できず、社会から差別され排除されていること(ソーシャルエクスクルージョン;social exclusion)が大きな問題となるとともに、社会保障などの既存の社会制度だけではその状態を容易に克服できないことから、排除されて孤立している人々を同じ社会の成員として包摂していくソーシャルインクルージョンの考え方が社会政策の重要な柱となった。日本でも、社会福祉制度があってもサービスが届かず利用できない、障害や疾病を持つ人、外国人労働者やホームレス、引きこもりや虐待などの問題を抱える人などの社会的排除や孤立が大きく注目されるようになり、2000年に当時の厚生省が設けた「社会的な援護を要する人々に対する社会福祉のあり方に関する検討会」がその報告書でソーシャルインクルージョンを進める必要性を説いている。また、04年には、だれもがともに生き支え合う「地域づくり・まちづくり」をめざして「日本ソーシャルインクルージョン研究会」(06年同推進会議に改称)も発足し、活動している。