社会保障と税の一体改革の一環として2012年8月に成立した年金機能強化法(公的年金制度の財政基盤及び最低保障機能の強化等のための国民年金法等の一部を改正する法律)に基づく改革で、健康保険・厚生年金保険の短時間労働者への適用が16年10月より拡大される。年金保険や医療保険には、サラリーマンや公務員等被用者が職場で加入する被用者保険と自営業者等が加入する国民年金、国民健康保険があるが、被用者でありながらも週30時間未満等の短時間労働者は、被用者保険に加入できず、十分な保障が得られないだけでなく、そのことが保険料の未納や滞納として国民年金と国民健康保険の財政問題の原因ともなっている。また、短時間労働者の多くが年金や医療が受けられる被扶養配偶者としての資格を維持するため、就労を一定所得内に抑えており、その社会保険の負担を単身の被用者が負担していることも問題となっている。このため、国民年金や国民健康保険の財政基盤を強化し、皆保険・皆年金の保障機能を強化するためにも、短時間労働者に広く被用者保険を適用することが急務となっている。しかし、短時間労働者への適用拡大には、新たに保険料負担が発生することになる事業者等からの反対が強く、今回の改正では対象となる短時間労働者は、(1)週所定労働時間 20 時間以上、(2)勤務期間 1 年以上、(3)月額賃金 8.8 万円以上(年収 106 万円以上)の者に限られ、対象企業も従業員501人以上とし、学生には適用されないことになった。週20時間から30時間勤務する短時間労働者は約400万人であるが、今回適用される者はそのうち25万人程度にすぎず、3年以内に検討を加え、対象企業を拡大するなど必要な措置がとられることになっている。