生物医学的には、加齢は、ヒトが誕生してから死に至るまでの全過程を指すのに対し、老化は、ホメオスタシス(homeostasis 生命体の内部恒常性)維持能力および障害を乗り越える能力(復元力)が低下して死に至るまでの退行的変化のことを指す。老化は、加齢の全過程のうち生殖期(または成熟期)を過ぎてから進行する。しかし老化の原因には遺伝子的因子と環境的因子があり、環境的因子としての栄養と運動の適切な摂取と実行により、一定範囲の老化防止の可能性がある。一方、心理学や社会学などにおいても、かつては老化や高齢化を心理的・社会的機能の減退として否定的にとらえられる傾向があったが、近年ではむしろ、個別的な精神的成熟の過程、あるいは特定の時代・文化との相互作用により形成される個人や世代ごとの多様なライフコース(人生軌道)の晩年期としてとらえる傾向が強くなっている。以上のような個人レベルでの加齢と老化、および社会レベルの高齢化に関する学際的学問分野が、老年学(gerontology)である。