近年、高齢者のうつ病が注目され、老人性うつ病などとも呼ばれている。認知症と症状が似ているため、注意が必要。高齢者の絶対数の急増や、とくに都市部での集合住宅などの閉鎖的環境に多くの高齢者が住んでいることなどがその背景にある。しかし、うつ病は小児期から高齢期にわたり、誰にでも起こりうるありふれた疾患で、「心の風邪」といわれる。一生のうちに一度以上かかる人は、7人に1人にという統計結果もある。精神症状としては、抑うつ気分や不安、焦燥感、意欲や思考力などの低下、身体症状としては、もの忘れ、食欲低下、不眠、頭痛、目まいなどがある。重症になると、自殺企図をともなうこともある。直接的な原因は不明で、身体疾患的要因、遺伝的要因、環境的(心理的)要因など複数の要因が重なって発症すると考えられている。治療すれば治る確率の高い病気だが、自分の気力や周囲の人の元気づけで治そうとするのは危険。早期に、精神科、心療内科などの専門医にかかることが第一である。治療の基本は、休息と薬である。多くの場合、一進一退を繰り返しながら快方に向かうので、気長に治療することが大切である。