有料老人ホームは、施設の整備や運営に公的補助のない老人ホームで、老人福祉法上は都道府県への届け出義務がある。設置主体は社会福祉法人から株式会社までさまざまである。介護保険法施行直後の2000年10月には350施設であったが、その後は急増し、12年には7500施設となっている。この背景には、(1)介護保険の「特定施設入居者生活介護」の指定を受けて施設内で介護サービスを提供することができるようになったこと、(2)特別養護老人ホームなどの不足に加えて、医療改革による長期入院患者の自己負担引き上げで退院を迫られる高齢者が増加したことなどがある。従来は500万~5000万円の入居一時金を支払って終身利用権を購入する方式が一般的であったが、新規参入による競争激化により、月額20万円程度の利用料で高額な一時金が要らない「賃貸型」が増えている。こうした動向に対処するため、厚生労働省は事業者向けの指導指針を改定して、有料老人ホームの居室基準の改善とともに、同ホームを「介護付き」「住宅型」「健康型」に分け、介護付きを名乗れるのは都道府県に届け出て指定を受けた事業者に限定することにした。また05年6月の介護保険法改正に関連して、老人福祉法上の有料老人ホームの規定を見直し、入居者10人以上の人数要件を廃止するとともに、提供サービス要件を拡大することによって規制対象範囲を拡大した。このように有料老人ホームの需要が高まるなか、09年3月に群馬県の老人介護施設で火災、死者が出る事故が発生した。その後、当施設が無届け施設であったことが判明。厚生労働省が調査したところ、09年10月末時点で有料老人ホームに該当しうる施設が全国に565施設あったが、そのうち389件が未届けであった。