事実状態が一定期間継続すれば、真の法律関係を問わずに、その事実状態どおりの法律関係を認める法制度。時効制度は民事にも刑事にも存在する。民事の例として債権の消滅時効がある(民法167条1項)。返さなければならなくなった借金を貸し主が請求せずに10年が過ぎれば、返還債権は消滅する。刑事の例では公訴時効がある。刑事事件として裁判所に起訴されない状態が一定期間続けば、起訴できなくなり、有罪判決を得られなくなる。長期間、起訴されない状態が継続すれば、遺族や世論の処罰感情も弱まってくること、真実を証明する証拠がなくなってしまうことがその根拠とされている。ただ、犯人が逃亡し続けているのに、親族を殺された遺族の処罰感情が数十年で弱まるとは限らない。そこで、2010年4月に刑事訴訟法が改正され、公訴時効期間が改定された。期間全般が大幅に延長され、さらに、殺人や強盗殺人など、人を死亡させた罪で、法定刑に死刑が定められている重大犯罪では、公訴時効が廃止された。