死刑を廃止せよという主張。代表的な立論の第1は、死刑が非人道的で非文化的かつ野蛮な刑罰だとする立場(人道主義)をあげることができる。憲法的な立場からの死刑廃止論もこれに属する。個人の尊重は、憲法が最も重視する価値であり、刑罰としてであれ、死刑を設けること自体、個人を最も軽視することにほかならないとする立場である。第2は、冤罪(えんざい)の不可避性と死刑の不可逆性を重視する立場(刑事政策的立場)である。裁判を行うのは人間であり、誤判の危険はどうしても残る。ところが、死刑は不可逆的な刑罰だから、執行後で無実の人を生き返らせることは不可能であり、取り返しがつかない。そういう刑罰は廃止すべきだとするのがこの立場である。