さまざまな意味で用いられるが、判例違反が最高裁判所への上告理由とされ(刑事訴訟法405条2・3号、民事訴訟法318条1項)、最高裁の判例を変更するには大法廷を開いて行わなければならない(裁判所法10条3号)ことからすれば、裁判所が個々の裁判の理由中で示した法律的判断を意味する。したがって、最高裁判例と矛盾する裁判は上訴されれば破棄される可能性が高い。これが判例の拘束力と呼ばれるものである。しかし、最高裁判例も変更される可能性があるから、判例の拘束力は絶対でない。判例とは具体的事件を前提とした判断であるので、判例の拘束力からして、判例の事案と本質において異ならない事案には同じ判断が下される。しかし重要な相違がある事案では、判例はそうした重要な相違が生じうることを意識して判断を下したわけではないので、判例の拘束力は当然には及ばず、異なる判断がなされても矛盾はない。さらに、判例が前提とする事実関係とは何かが明確でないときは、判例の理解にも対立が生じる。