補助者を含めた裁判官・検察官・警察官が、職務を行うときに暴行を加えたり、暴行以外の方法で精神的・肉体的に苦痛を与える刑法上の犯罪。7年以下の懲役または禁錮刑に処せられる。裁判官・検察官・警察官は、職務上、逮捕のように強制的に人を拘束する権限をもつ。それが乱用されないように、これらの者が職務上行った暴行や陵虐を処罰するのが本罪である。「暴行」の例に、刑務官が受刑者に高水圧の水を浴びせる、機動隊がデモ参加者を不必要に殴る等がある。「陵虐(りょうぎゃく)」とは精神的・肉体的に苦痛を与えることをいう。睡眠を与えない、用便に行かせない、食事を摂らせない等がその例である。被疑者取調べ時に問題となる脅迫による追及は、正当な追及との区別が微妙であるとして、本犯罪の対象外とされている(ただしそうした場合は脅迫罪が成立しうる)。最近では、2007年に無罪が確定した冤罪(えんざい)事件の「志布志事件」で、親族の名を書いた紙を踏ませる「踏み字」で自白を迫ったことが「陵虐」と認められ、取調べにあたった警察官が処罰されている。