1票がもつ票の重さが選挙区ごとに違うこと。憲法は1人1票原則に則るが、現実には、多くの選挙区で1人1票が保障されていない。1票の格差とは、選挙区ごとに1票がもつ重さが違うことである。たとえば、2010年7月に行われた参院選では、鳥取の選挙民が1人1票の選挙権をもつと仮定すると、神奈川県の選挙民は1人0.2票、東京都では1人0.23票となる。こうして対比すると、選挙権をもつ人のほとんどは1人1票が保障されていない。この問題について古くは、最高裁判所で、1票の格差が平等権保障(憲法14条1項)に反するという違憲判決が示されたことがある(1976年4月14日)。しかし最近では、平等権とは異なる次の論拠でこの問題がとりあげられ、各地で違憲判決が相次いでいる。1つは、民主政治は多数決ルールで行われるべきなのに、1人1票が実現していない現状ではむしろ「少数決」ルールで行われていること、もうひとつは、1人0.5票しか保障されていない現状は、住所による差別であり、個人の尊重(憲法13条前段)の理念に反する、というものである。このような判決の背景には、国民自らが選挙権を行使して政権交代が2009年に行われたことや、0.7票や0.5票しか保障されていないようでは民主主義が成り立たないことを国民の多くが知ったことがある。