裁判で死刑を言い渡すときの判断基準。1968年に東京、京都、函館、名古屋で警備員ら4人がピストルで連続して射殺された永山事件で最高裁が83年に示した。基準の具体的内容は、(1)犯罪の罪質、(2)動機、(3)事件の態様、ことに殺害手段や方法の執拗性・残虐性、(4)結果の重大性、ことに殺害された被害者の数、(5)遺族の被害感情、(6)社会的影響、(7)犯人の年齢、(8)前科、(9)犯行後の情状、以上の9項目を考慮し、極刑がやむを得ないと認められるときに死刑を科すことができるとする。この基準から死刑かどうかが自動的に決まるわけではなく、各項目を考慮して慎重を期すべきというニュアンスである。永山事件は、1カ月で4人を射殺して社会不安を招き、殺害動機も金品奪取と発覚回避にあり、実兄から自首を勧められるも更に犯行をくり返し、顔面等を至近距離から数回銃撃する残忍な方法で、命乞いを無視し、遺族が弁償を拒んでいたことなどから、死刑やむなしとされた。裁判員裁判でも、死刑判決は永山基準で判断されている。たとえば、大阪市で5人が殺害されたパチンコ店放火殺人事件で、大阪地裁は、引火性の強いガソリンを用いて多数の人を一度に焼き殺し、極めて残虐。何の落ち度もない5人の尊い命を奪ったと指摘し、死刑を言い渡した(2011年10月31日判決)。これに対して、耳かき店員ら2人を殺害した事件で、東京地裁は、被告の人格は反社会的、残虐ではなく、思い悩んだ末の犯行。深く後悔しており、極刑がやむを得ないとの結論には至らなかったとして、無期懲役を言い渡している(2010年11月1日判決)。