他人の名誉を傷つけること。刑事責任と民事責任が問われる。報道では「名誉棄損」という文字が使われることもあるが、法律用語では「名誉毀損」である。他人の名誉を傷つける具体的事実を公表すれば、名誉毀損罪として刑事責任に問われ、最高で3年以下の懲役刑が科される。インターネットの掲示板に「○○会社は客に事実を知らせずに金をだまし取っている」などと書き込むのが典型例である。このように、名誉毀損行為に刑罰を科して犯罪を防止し、名誉権を保護する一方で、表現の自由や国民の知る権利にも配慮する必要がある。そこで刑法は、公共の利害にかかわる事実について、公益を図る目的で公表された場合は、真実と証明されれば(真実性の証明)名誉毀損行為を罰しないことにしている。さらに最高裁は、確実な資料・根拠に基づき真実と信じて公表したときには、仮にそれが真実と証明できなくても犯罪は成立しないとしている(1969年6月25日判決)。以上の刑事責任のほか、民事責任も問題になる。すなわち、名声や信用などの人格的価値を傷つけて社会的評価を低下させれば、民法上の不法行為責任が成立する。その効果として、通常の不法行為責任と同様に損害賠償義務が発生するほか、特に、裁判所が名誉回復に適当な処分として、謝罪広告を掲載するよう命令することもできる。