弁護士に訴訟代理を頼まないで、自分自身で起こす民事裁判。民事裁判を起こすときには、代理人、つまり弁護士に任せることが多い。金額が140万円以下なら、法務大臣の認定を受けた司法書士でもよい。しかし、日本ではドイツと違って代理人を立てなければ裁判ができない(弁護士強制主義)わけではなく、自分で裁判を起こすこともできる。実際に簡易裁判所で扱う事件の約90%は本人訴訟である。本人訴訟は、費用面で代理人に払う分のお金がかからないのがメリットである。争う金額によっては数千円の出費ですむこともある。ただし、事件によっては法律上の争点が問題になるし、事実を証明する証拠集めをするのも負担になる。そのような作業は、法廷経験のない素人には難しい。本人訴訟に向いているのは、たとえば、借主に家賃の支払いを求めたり(契約書は必要)、雇い主に時給の支払いを求めたりするような(タイムカードのコピーは必要)、誰がやっても変わりがない単純な事件に限られよう。ちなみに、140万円を超える事件についても、司法書士は訴状や答弁書などの書類を作成したり、証拠の申し出についてアドバイスを行うことができる。また、裁判に持ち込まず、和解で決着をつけたいのなら、行政書士も相談に応じてくれる(和解交渉自体はできない)。求める法的サービスに応じて色々な士業を市民が主体的に使いこなせるようになれば、司法制度改革が掲げた自律的な社会に向けて一歩前進するだろう。