人が亡くなると、不動産や預金のような権利だけでなく、借金のような債務・義務も遺族に相続される。相続人(相続できる遺族)は、そのまま相続を承認してもよいが、たとえば財産と借金とを合わせたら借金が多かったようなときには、相続したくないだろう。その場合に備えて民法は、相続人が相続をしないことも認めている。これを相続放棄という。相続放棄をするには、亡くなったことを知ってから3カ月以内に、相続人が家庭裁判所に申立てを行う必要がある。承認するか相続放棄するかを考えるためのこの期間を熟慮期間という。亡くなった人の財産状況を調べて、承認するか放棄するかをよく考えるための期間である。ところが、東日本大震災の被災者は震災後の生活立て直しに手いっぱいなので、もし震災の前後に人が亡くなって相続が始まっても、3カ月程度で財産状況を調べる余裕はない。そこで、2011年6月に、相続放棄等の熟慮期間を延長する特例法が定められた。震災があった11年3月11日に対象被災地域に住所があり、かつ10年12月11日以降に自分が相続人になったことを知った人(亡くなった人ではないことに注意)は、熟慮期間が11年11月30日まで、約5カ月強、延長された。