再審を始める判断基準を示した1975年の最高裁決定が白鳥決定であり、そのもとになった事件が白鳥事件である。白鳥事件は、52年1月に札幌で起きた白鳥一雄警部殺人事件であり、63年に最高裁で懲役20年が確定した。さらに被告人は再審請求を行ったが、75年に最高裁は請求を棄却する決定を行った。この決定において、再審を行うかどうかに関する判断基準として最高裁が示したのが白鳥決定である。白鳥決定が示されるまでの再審は、完全に証拠を覆すだけの証言・証拠が求められたため「開かずの扉」ともいわれた。しかし白鳥決定では、裁判で使われた証言・証拠を総合的に判断し、判決に合理的疑いが生じれば再審の対象にできることとした。再審制度も刑事裁判である以上、「疑わしきは被告人の利益に」という大原則を適用すべきとされたのである。97年に東電女性社員殺害事件で強盗殺人罪に問われ、無期懲役の二審判決が確定したネパール人ゴビンダ・プラサド・マイナリさん(46)の再審で、東京高裁は2012年11月7日、白鳥決定の判断基準に従い、被告人を犯人とすることには合理的な疑いがあるとして無罪判決を言い渡した。