裁判の通常の流れに任せると証拠が失われてしまいそうなときに行われる証拠調べ手続き。裁判の事実認定は、証人や証拠物などの証拠によって行われ、それらの証拠は、裁判所が審理の順番に従って当事者に提出させて調べる。これを証拠調べという。ところが、たとえば証人が重体で死亡しそうなときや、ハードディスクに記録された情報が消去されそうなときなどのように、今すぐ調べておかないと証拠が失われてしまうようなとき(証拠保全の必要性があるとき)は、審理の順番を待たずに裁判所があらかじめ証拠調べを行い、その結果を証拠として使えるように記録しておく手続きをとることができる。この手続きを証拠保全手続という。
原発事故に関連して東京電力の旧経営陣を訴えている株主代表訴訟の原告代理人が、当時のテレビ会議映像の証拠保全を裁判所に申し立てた。その後、東京電力はテレビ会議映像を編集して公開したが、これは視聴制限が多い「名ばかり公開」だった。東電が公開に踏み切った理由は様々あるが、原告代理人の証拠保全申し立てにおいて、裁判所が「公開されているのだから証拠保全の必要はない」と判断させるためのトリックだという見方もある。