憲法の条文を改正手続に則して変更すること。日本国憲法が定める改正手続は、衆参おのおのの総議員の3分の2以上の賛成をもって改憲案を発議、すなわち国民に提案し、国民投票で過半数の賛成が得られれば、天皇が公布する形で改正される。2012年12月の衆院選で自民党は294議席を確保し、公明党と合わせると3分の2を超える325議席を獲得した。いままで不可能とも言われてきた「各議院の総議員の3分の2」が、13年夏の参院選の結果次第でにわかに現実味を帯びてきた。改憲派はまず、改正手続規定で求められる「3分の2」を「過半数」に変える案を提案してくるだろう。しかし、憲法が「3分の2」を求めていることには特別の意味がある。過半数で発議できるとすると、憲法が最も重視する少数派の人権がないがしろにされるおそれがあるのである。「3分の2」は他国に比べて厳しすぎるとも言われるが、アメリカやスイスなどではより厳しい手続きで改憲が行われている。過半数となると、政権交代のたびに改正が行われ、憲法が不安定になるおそれもある。なによりも、改正手続き緩和論には、他の憲法条項をも変える意図が潜んでいることに注意する必要がある。