2011年8月に発表された秘密保全法制案は、防衛秘密を漏らした公務員に罰則を科するだけのものではなかった。すなわち、(1)対象を防衛秘密だけでなく「外交と公安秩序維持」に拡大し、(2)情報を漏らすことだけでなく、情報を知ることも規制する。そのため、沖縄返還密約や核持ち込み密約のマスコミ取材も処罰対象になる。さらに、(3)守秘義務は、担当する公務員だけでなく、秘密の取り扱いを委託された大学や民間企業職員にまで拡大される。また、(4)罰則を科するだけでなく、不適切な人を排除し、調査をクリアした一部の人だけに秘密を取り扱わせる「適性評価制度」を設けた。そこでは氏名、住所のみならず、犯罪歴、預貯金などの信用情報や通院歴、アルコールや薬物の影響等、あらゆる事項が調査される点でプライバシーの重大侵害となる。秘密保全法を制定する動きはすでに1980年代に始まっており、その背後には日米軍事同盟を深化させるねらいがある。先の秘密保全法制案は2012年3月に国会提出が見送られたが、12年12月、政府・自民党は、安全を確保する上で秘密保護のため法律や制度上必要な措置を講じることなどを柱とする国家安全保障基本法の制定に着手している。