国の安全保障を確保するうえで秘密にすべき事項を保護することを目的とした法律。2013年12月6日に成立し、1年以内に施行される。行政の長が指定した特定秘密について、それが外部に漏れない体制を作り、もし漏れたら刑罰を科することがその骨格である。すなわち、私生活全般を調査し、秘密を漏らすおそれがある公務員に秘密を扱わせないようにしながら(適性評価制度)、それを漏らした公務員に最高で10年の懲役刑を科するほか、マスコミや一般人も、特定秘密を漏らすことについて公務員と共謀したり、漏らすよう公務員をそそのかしたり、煽動すれば、たとえ秘密が漏れていなくとも処罰される。しかし、適性評価制度は、政治活動歴のみならず信用状態や酒癖、精神性の通院歴などのセンシティブ情報を収集する点で、プライバシー権を大きく侵害する。また後者は、マスコミや一般市民が、たとえばインターネットで「〇〇について教えてくれ」と書き込んだだけで処罰される可能性も残り、知る権利と緊張関係にある。そもそも、秘密の範囲も4分野・23項目に及び、内容も無限定であるため、国民は何をしたら処罰されるのかがわかりにくい。さらに、秘密の指定が行政の長の判断だけで恣意的に行われるおそれもあり、第三者機関の設置が検討されているとはいえ予断を許さない。政府与党は、13年秋の臨時国会を「成長戦略実現国会」としながら、国民の人権に関わるこのような重要法案を、わずか70時間弱の審議時間で強行採決したのであり、話し合いを拒否する横暴と評することもできる。が、そもそもそのような強い権力を現在の与党に与えたのが誰かも忘れてはならない。