公権力を憲法でコントロールすることにより、その濫用を防ごうという近代国家の基本思想。人は生まれながらにして自由かつ平等であり、生来の権利(自然権)をもつ。この状態を維持するために、市民が契約(社会契約)によって政府を作り、もし権力が濫用されれば人民は抵抗できる、と唱えたのがジョン・ロック(イギリスの哲学者、政治思想家。1632~1704年)であり、その思想を近代自然権思想という。この「契約」にあたるのが憲法であり、政府が行使する権力はこの憲法にもとづくものだから、憲法でコントロールされることになる。このように、立憲主義は、権力の濫用を防いで市民が自由で平等な状態を維持することを目的とした思想である。立憲主義思想に対しては、中世の王権国家や天皇主権国家ならいざしらず、民主的に作られた政府が国民の自由を侵害することはないとの意見もある。しかし、ナチス・ドイツ、最近ではイラク攻撃を仕掛けたブッシュ政権のように、政府を支える多数意思というものは、不正確な情報やムードに流され、誤った判断を行う危険を常にもっている。だから民主的な政府といえども、憲法でその権力を縛ることはなお不可欠なのである。立憲主義は古い発想ではないことに注意してほしい。