国民一人ひとりに番号をふり、年金などの社会保障給付と納税を1つの個人番号で管理する仕組みを定めた法律。2013年5月24日に成立。政府は15年10月から国民に11桁以上の個人番号を付番してICカードを配布し、税務署や市町村、日本年金機構などがばらばらに管理している個人情報をネットワークでつなぎ、16年1月から順々に行政機関がその番号を使って必要な情報を取り出せるようにする。個人の所得をより正確に把握し、社会保障や税の給付と負担の公平化を図る一方、税の申告や年金の給付申請などで書類添付の手間が省けるなど、行政と国民の双方にメリットがあるといわれる。今後は、18年10月をめどに民間や医療への利用を目指す。しかし、勤務先や銀行、いろいろな取引先で共通番号が使われ、またICカードが身分証明書として使われるようになれば、プライバシー権を侵害するおそれが大きい。共通番号を基点にあらゆる個人情報が民間企業でも集約・管理され、自己情報のコントロールが困難になるからである。また、共通番号をキーにして個人データを集めれば、特定個人の生活状況や趣味・嗜好(しこう)、性格を分析できるのみならず、番号を知った他人が本人になりすまし、詐欺の温床になるおそれもある。そもそも、この制度を導入しても、全ての取引や所得を把握したり、不正申告や不正受給をゼロにすることができないことは、政府自身が認めており、数千億円といわれる税金を投入する費用対効果にも大きな疑問がある。それでも政府がこの制度を導入しようとするいちばんの狙いは、公的機関が個々人の情報を収集することにより、国家が国民を管理しやすくすることにあるように思われる。