DNA鑑定で血縁関係がないことが証明されても、法律上の父と扱う判決が2014年7月17日に最高裁判所で示された。Aと結婚後に浮気相手Cの子Dを出産した妻Bは、離婚後にCと再婚し、Dは現在BCに養われていたところ、Dが、Aとの間に法律上の親子関係がないことを裁判所に確認してもらうことを求めた裁判である。民法は、婚姻中に妊娠した子は夫の子と推定する。この推定をくつがえすには「嫡出否認の訴え」という裁判で勝たなければならないが、それには1年のタイムリミットがある。父がいつまでも確定しないと子が困るからである。タイムリミットを過ぎれば父子関係を否定することはほぼ不可能になる。では、DNAで血縁がないと証明された場合はどうか。たしかに、親子の血縁関係は家族の絆になることが多い。しかし、血がつながっているから子にとってよい父だとは限らないし、血縁がなくてもよい父にはなり得る。民法が重視するのは、子を確実に扶養してくれる人を確定することである。最高裁は、民法が1年で父を確定し、血縁関係にも増して子の身分関係を安定させようとしている点から、血縁がない父子関係を否定しなかったのである。