国が国民に兵役義務を課す制度。一定年齢に達すると強制的に軍隊に入隊させるのが通例である。徴兵制は現在の憲法では認められない。苦役からの自由(憲法18条後段)が侵害されること、軍隊が認められていないこと(9条第2項)、国防義務が定められていないことがその理由である。この点、自由民主党が2012年に発表した改憲草案に注意する必要がある。たしかに草案は、「意に反する苦役」に服させられない(草案18条2項)と定めているので、徴兵制の採用は不可能だという声もある。しかし、草案は国防軍を設け、国防義務を定めているほか、人権保障は公益および公の秩序に反しない限りで尊重される(草案13条)としている。このことに照らすと、改憲草案のもとで徴兵制を解釈で認める余地は十分にある。「国防軍は憲法が認めており、国民には国防義務がある。国防は最大の公益だから、苦役の自由を制限しても徴兵制は許される」というように捉えることもできる。