憲法が保障する人権は絶対無制約ではなく、他人の人権と衝突する場合などに制約を受ける。その制約を、「公共の福祉による人権制約」という。たとえば、表現の自由が保障されるとしても、他人の人権であるプライバシーを暴いていいことにはならないのである。憲法12条は、「この憲法が国民に保障する自由及び権利は、(中略)常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ」とする。これは一見すると、天皇や国益のために人権を制約できる意味にとる余地もある。しかし「公共」を意味するpublicは、peopleと同じ語源をもつ言葉であるから、先の条文は、人権の制約が、他の人々の人権と衝突する場合等に限られ、国益や公益のような漠然とした利益を守る名目で制約することは認めない趣旨と考えるべきである。