国の非常事態に憲法秩序、すなわち権力分立と人権保障を政府が停止できるとする規定。憲法改正の論点として議論されている。たとえば、自民党の改憲草案99条2項では、緊急事態条項として、内閣が「法律と同じ効力をもつ政令を制定できる」とし、立法権の行使を認める。時の内閣が新法を作り、従来の法律を自由に変えることができるようになる。また、同条3項は、緊急事態では「何人も内閣等の指示に従わなければならない」とする。令状なしの拘禁、外出や移動の禁止、財産の剥奪、出版禁止などが可能になるのだろう。この措置は、一時的ではなく永続するおそれがある。同条4項によれば、緊急事態が宣言されると衆議院は解散されず、議員の任期が延長され、選挙は行われず、緊急事態宣言も更新できる。特にテロ対処などでは、緊急事態の終了時期はどうにでも判断でき、濫用的な更新によって政権永続に悪用されるおそれもある。宣言の終期や更新の制限の各規定は必須である。