放送法では、放送は限られた資源である電波を利用する事業であるため、NHK、民放を問わず公共的目的に役立つ多様で質の高い番組を提供する「公共性」が求められている。とくにNHKは国民に義務づけられた受信料収入を経営基盤とした特殊法人で、国営放送ではないが、広告収入を経営基盤とする民間放送局と違って、その公共性が厳しく要求されている。NHKは放送法で、公共の福祉のために、豊かで、良質の放送番組を報道、教養、スポーツ、娯楽などすべての分野にわたって、日本全国どこでも、誰でも、すべての人にあまねく、必要な番組を提供することが義務づけられた放送事業体であり、その活動を支えるのが受信料である。放送を視聴するために受信機を購入した者は、NHKと受信契約を結ぶことを義務づけられる。すべての国民にとって必要なサービス(ユニバーサルサービス)を提供するNHKは、国家が支えるのではなく、すべての国民が支えるという考え方である。NHKは立法、司法、行政などの国家の諸権力を監視する基幹的な放送メディアとして位置づけられている。受信料支払いの拒否・保留件数の増加は、NHKに課せられたこうした公共性を、現実に果たしていないのではないかという国民の疑問から生まれた点のあることを忘れてはならない。