自らのパーソナリティーを前面に押し出して、政策を賛成、反対など単純化し、毎日の首相の“ことば”と“行動”がテレビニュースの素材になるように演出して、話題を作り、国民に政治を身近に感じさせ、楽しませることで政治の重要問題を国民の視野の外に置いた小泉純一郎首相(当時)の政治手法。小泉首相はテレビ時代を特徴づける政治手法を生理的感覚で巧みに駆使して国民の人気を集め政権運営に成功した。とくに国民の共感を呼び、記憶に残る「改革なくして成長なし」とか「抵抗勢力」などの簡潔なフレーズで政策の焦点化を行い、毎日必ず記者会見を開き、また各種イベントに顔を出すなど、「今日のニュース」の材料をこまめに提供し続けて、浮気な大衆感情をひきつけ、高い内閣支持率を維持した。2005年9月の総選挙における自民党の勝利は、小泉首相の国民に対する親近感の醸成を基盤にして、選挙の争点を郵政民営化への賛否に絞り込み、郵政民営化反対派は改革を止める勢力であると位置づけ、政治マーケティングの手法を活用した結果であった。主婦層と年配者を中心に、政策の詳細はわからないが小泉首相のキャラクターに好感を寄せる人々に向かって、郵政民営化が改革を推進する道であることをキャッチフレーズにして教え込む戦術が功を奏した。