人権救済制度の確立を目的として2002、03年の通常国会に提出された法案。その特徴は、あらゆる人権侵害を対象にする一般救済手続きと共に、特別救済手続きを定め、特別救済の対象に、(1)差別助長行為、(2)差別、虐待、セクシュアルハラスメントなどの行為と並んで、(3)報道機関による人権侵害として犯罪被害者およびその家族、加害者の家族に対するプライバシーを侵害する報道と過激な取材を加えたことである。法務省の外局として設置される人権委員会(仮称)が人権侵害の救済にあたり、人権委員会は報道機関に対して勧告し、従わなければ内容を公開できるとしたが、メディア規制につながるなどの反対の声が根強く、廃案になった。また法務省は04年3月、省内規定「人権侵犯事件調査処理規定」を全面改正した。インターネットによるプライバシー侵害など新しいスタイルの人権侵害事件が増えていることから、侵害の程度が重い順に告発、勧告、説示などの対応がとられていたが、その前段階として調整、要請などの手続きを規定し、調査途中でもこれらの措置をとることができるようにした。人権擁護法案はその後、05年の政府案ではメディア規制に関する部分を付則で凍結し、凍結解除の基準が示された。また5年後の見直し規定を新設したが、国会提出は見送られた。政府によるメディア規制をはかる法案は、機会をとらえて提出されている。