2005年4月に施行された犯罪被害者等基本法に基づき、政府は05年12月に事件・事故の被害者を支援するための犯罪被害者等基本計画を閣議決定し、事件の被害者を発表する場合、実名・匿名のどちらで発表するかの判断を警察に委ねた。すでに05年4月に個人情報保護法が全面施行されてから、必要な個人情報が秘匿され、事件では警察が被害者の実名を公表することを拒否するなどの過剰反応が広がっている。さらに犯罪被害者等基本計画で被害者の実名・匿名発表の判断を警察に委ねたことは、被害者を取材するメディアの自主性が奪われ、事件の自由で正確な報道が困難になるおそれがある。被害者を実名・匿名のどちらで報道するかは、報道機関による総合的判断に委ねられるべきだとメディア側は主張する。匿名社会の動きが強まれば、社会の動向を知り判断する機会が閉ざされる危険が増大するとして、メディアは警戒している。