インターネットで事件や問題に対して形成される社会的な意見の潮流。ネットや携帯電話の普及により、きわめて短時間のうちに、全社会的な広がりで方向性を持った意見が形成されるようになった。ネットは双方向性を持った自己表現の手段であり意見交換の社会的な場ともなるが、そのときの情緒的な反応や気分をメッセージにして即座に拡散し、感情的な意見の渦を社会的に増幅する手段となりがちである。ネット上では匿名の主体による主張を許容するところから、言論と表現を無責任に扱う危険性を持っている。ネット掲示板「2ちゃんねる」がとかく中傷のやり取りとうわさの震源地となりがちな理由はここにある。デジタル化時代においては、世論はマスコミを舞台に展開するだけではなく、ネット上での感情反応が生み出す社会的空気によっても左右されるようになった。男性会社員がラーメンチェーン店を中傷する書き込みをネット上で行った事件の裁判で、2010年3月に、最高裁判所は、ネット上での表現行為は多数の人々が同時に閲覧でき、信頼性のある情報として受け取られ、それに対してネット上で反論しても被害は十分には回復されないという理由で、新聞や雑誌などの従来の媒体と同じように名誉棄損罪が成立するという判断を初めて下した。またネット上の掲示板に他人を中傷する文章を書き込んだ別の事件の裁判で、最高裁は同年4月、掲示板の管理者だけでなく、プロバイダーに対しても、被害者側に発信者の名前と住所を情報開示する義務があるという判決を下した。