すべての書籍の内容をインターネットで世界中に公開するために、ネット検索大手のグーグル社が進めている「グーグルブック検索・図書館プロジェクト」サービスのための書籍全文のデータベース化をめぐって、グーグル社と、全米作家組合および全米出版社協会が争っていた集団訴訟が2008年10月に和解で合意したことから、その影響の甚大さが世界各国で問題となった。まず、著作権に関する国際条約ベルヌ条約の規定によって、加盟国で出版された書籍は、アメリカ国内でも著作権が発生することから、アメリカで著作権を有する人のすべてが対象となるというこの合意の影響は、世界に及ぶことになる。さらに、この和解案は09年5月5日までに離脱を宣言しないと、自動的に和解案に参加することになっていた。その及ぼす影響の大きいことから、離脱期限は9月4日まで延長された。世界各国を混乱させたこの問題は、とくにドイツ、フランス政府が反対を表明し、アメリカ司法省も国際的な配慮をすべきだと要求したことなどから、グーグル社とアメリカ出版界は和解修正案を11月13日、ニューヨーク連邦地裁に提出した。和解修正案では、対象をアメリカ、イギリス、カナダ、オーストラリアで発行した英語圏書籍に限定した。そのため日本の書籍は翻訳書を除き、その大半は対象外となった。ひとまずグーグルブック問題は収束したわけだが、近い将来グーグル社がその実績を踏まえて世界の書籍のデータベース化を進めることが予想されている。またドイツ、フランス政府が直ちに反対を表明したのに対して、日本政府はその対応が遅く、後手に回ったことに将来の課題を残した。