2010年、政府の情報がインターネットを通して流出する事件が相次いで起こった。10月28日、国際テロ組織に関する情報提供者の氏名などが記載された機密文書も含まれる警視庁公安部の内部資料が、外国のサーバー経由でインターネット上に流出した。警視庁は30日、その流出を公表したが、しかし内部資料であるとは断定せず、12月24日になってやっと警視庁からの流出情報であることと、情報管理上の不備を認めた。この情報流出は、日本警察の国際的信用を著しく損なうものとなった。さらに出版社の第三書館が、流出データを収録した「流出『公安テロ情報』全データ」を出版。東京地方裁判所が、名前や顔写真を掲載されたイスラム教徒数人の申し立てを受理し、書籍の出版と販売を差し止める仮処分命令を2度にわたって出すなど、警視庁情報の流出は市民のプライバシー侵害につながる結果を招いた。11月5日には、9月に起きた尖閣諸島沖での中国漁船衝突の模様を記録したビデオ映像を海上保安官が動画投稿サイト「ユーチューブ」に投稿。映像の流出経路に関する調査から、海上保安庁の映像管理体制に組織的欠陥があったことも明らかになった。11年1月、映像を流出させた元海上保安官は起訴猶予となった。国外でも、10年11月に、内部告発サイト「ウィキリークス」が、入手した約25万件に及ぶアメリカ外交文書の一部を公開。アメリカ政府は対応に追われる事態となった。ネットによる情報流出は、直ちに国際的なスケールでの情報公開と一般的な共有状態を生み出してしまう。政府が秘密とする情報の暴露、公開をめぐっては、権力の監視という視点から市民の利益とみる議論がある一方で、国益という観点から抑制が必要だとの指摘もあり、現代のメディアは微妙かつ慎重な判断を迫られている。