市町村内の一定の区域を単位とし、住民自治の強化や行政と住民との協働の推進などを目的とする組織。平成の大合併では、自治体数が3232から1719へと大幅に削減された(2012年1月現在)。その結果、住民の声が行政に届きにくくなることへの不安と、地域の文化や歴史、これまでの住民自治の独自の取り組みなどへの配慮が求められた。また04年5月の地方自治法の一部改正は、地域内分権を後押しする意図が込められている。このうち、合併特例法に基づく(1)合併特例区は法人格をもち、5年間以内に限って合併前の旧市町村を単位として、合併市町村の長が選任する区長と協議会により独自に予算・決算を決め、共有財産や地域独自のサービスの維持・管理などの公共事務を実施する権限をもつ。これに対して(2)地域自治区(特例)は、合併特例法に基づき旧市町村の単位で設置されるが、法人格はもたず、合併市町村の長が区長と地域協議会を選任する。地域の意見を取りまとめて意見を述べる権限はあるが、独自の予算編成権はない。住民に身近な行政サービスを提供するための区事務所が置かれる。設置期間はおおむね10年が適当とされている。一方、地方自治法の一部改正による(3)地域自治区(一般)は、地域住民と行政が協働して、地域課題の解決をめざすまちづくりの恒久的なしくみとしての活用が想定され、おおむね小学校区や中学校区を単位とし、市町村全域に設けることが原則となっている。従来は行政の各部局ごとの計画・裁量によりタテ割りで配分していた補助金・助成金などを、市町村の長が選任する地域協議会の場で、地域住民自らの手で意向を一本化させ、行政に反映させる権限が与えられている。一方、全区に市町村事務を提供する事務所が設置されるので、本庁職員よりも地域担当職員の割合が相対的に高まることが予想される。これらの変化により行政の間接コストを下げるとともに、地域の自治力を高める効果が期待される。11年4月時点で、宮崎市など3団体が合併特例区を、松本市など32団体が地域自治区(合併特例)を、宮崎市や豊田市など17団体が地域自治区(一般)を設置している。