市民社会。国家でも市場でもない社会の中間構造部分。家族、近隣組織、クラブなどの自発的結社や団体・組織などの総体を指す。ボランティアやNPOなどの市民の側から公共性を紡ぎだす活動や、市民から信頼される効率の良い行政機構は、市民社会の厚みに規定される。市民社会の重要性の再認識の契機は、東欧革命を主導した労働組合やカトリック教会の動き、アメリカ都市部の治安回復に貢献した家族や地域組織の活動であった。これを受けて、1970年代から80年代における福祉国家政策などの「大きな政府」路線が招いた大幅な財政赤字(政府の失敗)と、市場万能主義による貧富差の拡大(市場の失敗)という二つの失敗に対する解決策として、行政権限を外部化(アウトソーシング)し、公共サービスの提供に市場原理を働かせるための受け皿としての市民社会への期待が近年高まってきた。