排出量取引とは、汚染物質の排出枠を排出主体に配分し、その取引を認めることによって、総量削減目標を達成しようとする政策手段。温暖化対策の場合には、汚染物質は二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガスを指す。国内排出量取引制度とは、国内における排出枠の総量(すなわち排出総量、キャップともいう)を設定した上で、排出枠を個々の主体に配分するとともに、他の主体との排出枠の取引(トレード)を認めることを内容とする。排出量取引は、排出総量を特定した上で、市場のメカニズムを活用した取引によりCO2削減に価格をつけることによって調整する仕組みである。そのため適切な制度設計がされれば、最小の費用で目標数値まで削減することができるので、地球温暖化対策の有効な手段として期待されている。日本では、2008年10月から「排出量取引の国内統合市場の試行的実施」が始められ、その経験を活かして本格導入する場合に必要となる条件、制度設計上の課題などを明らかにするとともに、技術とモノ作りが中心の日本の産業に見合った制度のあり方を考え、国際的なルールづくりの場でのリーダーシップの発揮につなげることとしている。しかしながら現在の国内統合市場試行の内容は、排出総量は設定されず、目標も原単位と総量が混在している。企業の参加も自主的であり、公正な価格形成がされるか疑問視され、このままでは国際炭素市場には受け入れられない仕組みであると懸念されている。