鳥や獣による被害。野生動物による農業やその他の被害は昔からあるが、近年、農業・林業への被害が注目されており、横ばい傾向にあるものの、農業だけでも全国で毎年200億円にも上る被害が発生している。農産物被害ではスズメやカラス、ムクドリなど鳥類による被害は減少傾向にあるものの、イノシシ、シカ、サルなどの被害は横ばい、ないしは増加傾向がみられる。林業では植林した樹木に対するシカの食害、水産業では、アユなどの養殖魚に対するカワウや野生化したアライグマやミンクによる食害、北海道でのトドなどによる漁具の破壊などがあり、業種や地域によってさまざまな被害が発生している。近年では、クマが民家近くに出没して、住民の不安をかき立てている。また、動物園から逃げて繁殖したタイワンリスによる電線をかじる被害や、カラスのごみ集積所荒らし、飛行機に鳥が衝突するバードストライクなどは、都市部での鳥獣被害である。被害対策としてはフェンスや爆音などで生産物を守る物理的な防衛的方法、捕獲、捕殺など対象動物の駆除、管理をする攻撃的方法のほか、山間部の環境を野生動物がすみやすいものにし、犬やその他の手段を使って住民の生活する場所と野生動物のすみ分けを促すなどソフトな手法もある。野生動物は学習能力もあるので、単純な被害防止策では効果も限られ、持続しない傾向があり、随時適切な方策を組み合わせ継続することが必要である。