日本の少子化対策は1994年の「エンゼルプラン」が始めである。99年には「新エンゼルプラン」が作られ、2003年には、大企業や自治体に子育て支援の行動計画を義務づける「次世代育成支援対策推進法」と議員立法による「少子化社会対策基本法」が相次いで成立した。04年6月に閣議決定された「少子化社会対策大綱」はこれらを包括した指針となるものである。ここ10年の政府の少子化対策は仕事と子育ての両立支援に重点を置いてきたが、大綱はより広範な対策を打ち出し、今後取り組む方向性として次の三つの視点を掲げる。(1)若者が職業や結婚、出産、子育てを人生に積極的に位置づけること、(2)子育ての不安や負担を軽減し、職場優先の風土を見直す、(3)生命を次代に伝え育むことや家庭を築くことの大切さの理解を深め、社会全体で子育てを支える。さらに06年3月に少子化対策に関する政府・与党協議会が設置され、6月には「新しい少子化対策」が決定された。これは子育て支援策を拡張し働き方の改革を謳い、家族・地域の絆(きずな)を再生し、社会全体で子どもや生命を大切にする国民運動を推進しようとするものである。出産一時金の引き上げ、妊娠・出産~乳幼児期の医療費援助、女性再就職支援などが目新しい。問題は対策実現のために、どれだけ大きく有効な財源が得られるかであろう。