統計的なデータが整備される以前の時代を対象とした人口学の分野。教会の洗礼や婚礼・死亡の記録、穀物の出来高、収税の記録などのデータ解析が主要となる。西欧ではフランスの人口学者アンリ(L.Henry)が、キリスト教会教区簿冊の分析に家族復元法という分析法を応用して、人口動態登録のない時代の出生率・死亡率の推計を行った。日本では、宗門改帳、懐妊帳を用いて徳川時代の人口動態の推定を行っている。宗門改帳は世界でもまれな、近代社会以前の部分的センサスとも見なされるが、乳児死亡推定に難点がある。しかし、最近発達した人口分析方法の利用によって、この問題も克服されつつあり、これまで停滞していたと考えられた徳川期の人口に新しい光が当てられ始めた。