合計特殊出生率が1.3未満の国。世界には2003年当時21を数える超少子化国があり、それらは三つのグループからなっていた。第1は南欧の国々である。1990年代後半から21世紀初頭にかけてイタリア、スペイン、ギリシャはこのグループにあり、とくにイタリアとスペインは出生率最低競争を演じた。第2は東欧あるいは旧ソ連圏の国々でロシアを中心に、ポーランド、チェコ、ハンガリー、そしてバルト三国等を含んでいた。第3は東アジアの国々あるいは地域で日本、韓国、台湾、香港、シンガポールである。一般に社会や家族制度に権威主義的な傾向が強く残っている。南欧では子どもが親から離れて経済的精神的に自立するのが遅い。また政府の育児支援体制が北・西ヨーロッパの国々に比べて十分でない。旧ソ連圏の国々は社会主義経済から市場経済への移行が未完であり、将来の不安が背景にあった。東アジアの国々は男尊女卑的な傾向がいぜん認められ、女性の就業と出産育児を調和する制度が未成熟である。またヨーロッパ諸国と違ってこれまで出生抑制政策をとってきたことも注目される。しかしながら、最近ほとんどすべての先進国、そして台湾を除く東アジアで出生率が上昇してきた。09年では超少子化国はわずかに5カ国となり、その中でヨーロッパに属する国は東欧のモルドバだけになった。残りは日本以外の東アジア諸国である。ただし09年の出生率は前年よりふたたび低下し1.3以下にあり、韓国1.15、シンガポール1.22、台湾1.03、香港1.04である。日本は09年に1.37と前年と同じレベルにとどまっており、ヨーロッパ諸国のように10年に上昇がふたたび起こるかどうかは不明である。