2014年の消費税8%引き上げ以降、新設住宅着工戸数が激減し、住宅業界は苦境に陥ったが、相続税対策のための賃貸住宅の増加がそれを救った。住宅メーカー各社は、注文住宅や建売住宅が減少するなか、賃貸住宅の受注で何とかしのぐことができたのである。しかし、賃貸住宅の急増は、入居率の低下や賃料の下落を招き、家賃保証などを巡って住宅メーカーとオーナーの間でトラブルが増加した。金融庁は特に地方銀行などの地域金融機関に対して、過剰な賃貸住宅への融資を自粛するように指導を強化、17年以降、賃貸住宅ブームも鎮静化している。
一方、16年には日本銀行がマイナス金利政策を導入、住宅ローン金利が大幅に低下した。民間の変動金利型の実質金利は0%台まで下がり、やや金利の高い全期間固定金利型でも1%前後で利用できるようになった。このため、住宅ローンの利用が急増したが、その多くは既存のローンの借り換え需要であり、新規の需要にはさほどつながっていないといわれる。
住宅市場では、オリンピック需要での地価の上昇と建築費の高騰を受けて住宅価格の上昇傾向が強まっている。不動産経済研究所によると、17年の首都圏の新築マンションの平均価格は5908万円で、これはバブルピーク時である90年の6123万円に迫るもので、ピーク前後の1989年、91年価格を上回った。それにつれて中古マンション価格も上昇している。東日本不動産流通機構の調査では、5年連続して上昇、2017年の成約価格の平均は3195万円。ただ、こちらはバブルピーク時には4000万円近い価格まで上がっていたので、それに比べるとかなり低い水準にとどまっている。