消費者保護を目的に、都道府県や市町村に設置されている行政機関。昭和30(1955)年代に入り、白黒テレビ、電気冷蔵庫、電気洗濯機、電気掃除機などの電化製品が家庭に普及し始め、1964年の東京オリンピック開催以降、カラーテレビを購入する消費者も次第に出始めた。消費者は、新しく登場してきた商品の使用方法や機能、安全性についての商品情報を必要としたが、メーカーからは十分な情報が提供されず、情報不足によるトラブルが相次いだ。大量生産、大量消費時代を背景として、65年11月、兵庫県が消費生活の科学化をスローガンに、三宮駅前に「生活科学センター」を開設した。所内に家電各社の電化製品を展示し、県民が実際に試用テストを行うことを可能にし、さらに商品購入後にしか見ることができない使用説明書を置き、購入前に性能や機能を確認できるようにした。同センターは、それまでどこも実施していなかった消費生活相談の受け付け、センター独自の商品テストや啓発などの業務を開始した。2011年4月現在、全国665カ所に公的消費生活センターが設置され、主に相談、啓発業務を行っている。1年間の相談件数は約90万件に達し、消費者被害の未然・拡大防止、被害救済の実質的とりでの役割を果たしている。地方公共団体における消費生活センターの設置は、「消費者安全法」に規定され、都道府県には設置義務があり、市町村には努力規定が設けられている。近年、地方行政改革の影響を受け、地方公共団体中には他の組織との合体などの動きもある一方、消費者行政により熱心に取り組んでいる自治体もある。