消費税の実際の負担者は消費者とされているが、消費税法上は事業者が納税義務者になる。その事業者は消費者から代金の一部として消費税相当額を受け取り、消費者に代わって国に納める。益税とは、消費者が支払った消費税相当額が国庫に入らないで、事業者の手元に残ることをいう。この問題は、簡易課税の場合に顕著に現れる。簡易課税とは、基準期間(原則として法人は2事業年度前、個人は2年前)の課税売上高が5000万円以下の事業者に認められる制度。仕入税額控除を実額ではなく、例えば小売業は課税売上高の80%で原価や経費が発生したとする(みなし仕入率)。仕入れや経費が課税売上高の75%であれば、5%の益税が発生する。これに対し原価や経費が課税売上高の90%の場合は、10%の負担増になる。これを損税という。ただし、現状は益税、損税をあいまいに使っている。例えば、本来は課税事業者が21.6万円(本体20万円、消費税1.6万円)で販売するところを、ライバル会社との競争に勝つために20万円とした場合には、1.6万円の損税が発生しているという。しかし、この場合の1.6万円は、消費税に損税が発生した(消費税をもらえなかった)のではない。価格競争の結果、1.6万円を値引きしたにすぎず、益税、損税の問題とは無関係である。2014年度の税制改正では、簡易課税のみなし仕入率が60%の金融業・保険業をみなし仕入率が50%の第5種事業に変更する。新たにみなし仕入率が40%の第6種事業を創設し、みなし仕入率が50%の不動産業を第6種事業に変更する。この改正は、15年4月1日以後に開始する課税期間について適用する。