相続税は、相続人等が相続、または遺贈により取得したすべての財産を合計して、財産全体の相続税の総額を計算する。次に、その相続税の総額を各相続人等が相続、または遺贈により取得した財産の価額に比例して割り振り、各相続人等が納める相続税額を求める。このような計算の仕組みから、ある相続人が相続税を滞納した場合は、他の相続人が代わりに相続税を納める義務を負う。これを連帯納付義務という。例えば、20年の延納の適用を受けていた相続人が19年後に延納の許可が取り消され、滞納状態になることがある。この場合、相続税本税と利子税・延滞税の合計額が担保として差し出した物件の時価を上回り、滞納している相続人が相続税を支払うことができないときは、連帯納付義務の規定に基づき、税務署長は他の相続人に納付を求める。19年後に納付を求められる他の相続人にとっては、寝耳に水の心境になる。この連帯納付義務の規定については、これまで廃止の要望が出されていた。2011年度の税制改正で、相続人の1人に延納または物納の許可を申請した相続税がある場合には、税務署長は、連帯納付義務のある他の相続人に、連帯納付義務の規定の適用がある旨を通知するという規定を設けた。また、滞納している相続人に督促をしたが、督促状を出した日から1カ月を経過する日まで完納されていない場合は、税務署長は、連帯納付義務者にその旨を通知する規定なども設けた。12年度の税制改正で、(1)申告期限等から5年を経過した場合(一定の場合を除く)、(2)納税義務者が延納または納税猶予の適用を受けた場合には、連帯納付義務を解除する。12年4月1日以後に申告期限等が到来する相続税について適用する。