相続税は相続財産に課税する財産税(ストックに課税する税)、所得税は財産を譲渡したことによる収入から生ずる譲渡所得に課税する収得税(フローに課税する税)であると説明されている。財産税と収得税は課税体系が異なるので、相続税を課税した土地を譲渡したとしても二重課税には当たらないと考えられている。例えば父親が死亡して相続が開始し、相続した土地の相続時の評価額が8000万円だとする。父親は30年前にその土地を4000万円で取得していた。相続人である子供は1年後にその土地を他人に1億円で譲渡した。この場合の譲渡所得は、1億円から父親が取得した4000万円を控除した6000万円になる。相続税の課税対象になった8000万円は、譲渡所得の計算では考慮しない。しかし、8000万円についてすでに相続税を支払っていることを考慮して、その後に相続財産を譲渡した場合の譲渡所得に特例を設けている。これが「相続財産に係る譲渡所得の課税の特例」である。主な適用要件は、その相続の開始があった日の翌日から、相続税の申告書の提出期限の翌日以後3年を経過する日までの間に、その相続税の対象となった相続財産を譲渡すること。この場合の譲渡をした資産が土地である場合は、その相続人の相続税額に、その相続人が相続により取得した土地全体の評価額を掛け、その相続人が相続した全体の相続財産の評価額で除した金額を取得費に加算する。譲渡をした資産が土地等以外の資産である場合は、その相続人の相続税額に、譲渡をした資産の相続税の評価額を掛け、その相続人が相続した全体の相続財産の評価額で除した金額を取得費に加算する。つまり、土地については、譲渡しない相続した土地について支払った相続税も取得費への加算が認められていた。2014年度の税制改正では、相続財産である土地を譲渡した場合でも、譲渡した土地に対応する相続税相当額だけに改めた。