日本は少子高齢社会になるとともに、夫婦共働きの世帯が主流になりつつある。しかし、共働きの夫婦に子どもが生まれた場合は、子育ての問題が生じる。保育園に入園させた場合は、送り迎えに対して夫婦間で調整しなければならない。高齢の両親がいる場合は、介護施設に入ってもらうかどうかを考えなければならない。介護施設への入居は、両親または子どもの負担も相当な金額になるが、行政にとっても社会保障費として重い負担がのしかかっている。このような社会コストを軽減する方法として、50~60年前までは普通であった三世代が同居するという生活様式の復活が考えられる。祖父母が元気であれば、子ども夫婦に代わって保育園の送り迎えができる。祖父母も孫が近くにいれば認知症の進み方が遅くなる可能性がある。2016年度の税制改正で、三世代が同居する住宅へのリフォームをした人には、所得税から税額控除を認める特例を創設した。資金の調達方法には、借入金と自己資金による方法があるが、いずれも特例の対象とする。借入金による方法は、(1)所有する居住用の家屋について一定の三世代同居改修工事を含む増改築等(三世代同居改修工事等)をすること、(2)三世代同居改修工事等とは、(イ)調理室、(ロ)浴室、(ハ)便所、(ニ)玄関のいずれかを増設する工事で、改修後、(イ)から、(ニ)までのいずれか二つ以上が複数となるものであること、(3)その工事費用(補助金等の交付がある場合には、その補助金等の額を控除した後の金額)の合計額が50万円を超えること、(4)16年4月1日から19年6月30日までの間にその者の居住の用に供すること、(5)借入金は償還期間が5年以上で、最高1000万円を限度とすること、(6)税額控除の期間は5年であることなどが主な適用要件(他の要件は省略)。税額控除額は、三世代同居改修工事に係る工事費用(250万円が限度)に相当する借入金は年末残高の2%、その他の借入金は年末残高の1%とする。自己資金による場合は、標準的な工事費用相当額(250万円が限度)の10%をその年の所得税の額から控除する。標準的な工事費用相当額とは、三世代同居改修工事の改修部位ごとに標準的な工事費用の額として定められた金額に、その三世代同居改修工事を行った箇所数を乗じて計算した金額をいう。