日本の年金制度は分立・運営されており、制度間での給付と負担の公平化は確保されていなかった。1985年の年金制度改革では、分立していた年金制度を基礎年金と報酬比例年金からなる2階建て年金に再編成し、基礎年金部分の一元化を完成させ、2階部分の厚生年金と共済年金の給付の公平化も進められた。さらに、電電公社など旧三公社の共済や農林共済などが厚生年金に統合された。しかしながら、2004年の年金制度改革をきっかけに、国民年金の空洞化や公務員と民間サラリーマンの保険料、給付の差などが「年金一元化」問題として再び注目されるようになった。年金一元化については、サラリーマンと公務員などの被用者間の一元化、自営業・無職・非正規雇用者などが加入する国民年金も含めた制度全体の一元化の2つの考え方と、国民年金はそのままで、サラリーマンの厚生年金と公務員等の共済年金を一元化する被用者年金一元化の考え方がある。12年の社会保障と税の一体改革により、サラリーマンと公務員の年金を一元化するための法律が成立した。その内容は、(1)各共済年金の1・2階部分の保険料率を厚生年金保険の保険料率18.35%で統一すること、(2)共済年金の職域部分を廃止し、積立金のうち厚生年金と共通部分を切り分け、残りの積立金を活用し、新しい職域年金を創設する、(3)共済などの組織は残しながら、給付と負担の状況は国の会計にとりまとめる、(4)公務員共済に対する公費負担である追加費用の見直しと恩給部分について年金を引き下げる、などである。以上の改革により被用者年金は会計上一元化され、今後、財政検証も被用者年金一体で行われることになる。しかし、保険料の徴収や給付を行う共済組織は維持されたため、厚生年金被保険者として、第1号厚生年金被保険者(従来の厚生年金被保険者)、第2号厚生年金被保険者(国会公務員)、第3号厚生年金被保険者(地方公務員)、第4号厚生年金被保険者(私学共済加入者)という分類が新たに生まれることになった。