日本でも子どもへの虐待が深刻化している。全国の児童相談所の相談対応件数は毎年増え続け、2014年度には10年前の約2.7倍の8万8931件に上る(厚生労働省、速報値)。虐待の種類としては、「心理的虐待」が43.6%で最も多く、「身体的虐待」(29.4%)、「ネグレクト(保護の怠慢・拒否)」(25.2%)を含めた3種が大半を占める。育児不安・育児ストレスや産後うつなどが直接の原因とされるが、親自身の被虐待経験が背景にあることも少なくない。虐待の早期発見や予防には、社会的に孤立して育児不安に悩む親への社会的支援の充実と関係諸機関の連携が必要である。01年11月施行の児童虐待防止法では、学校の教職員や医師や弁護士などに虐待早期発見の努力義務が課された。04年10月に施行された改正法では、対象が虐待を「受けた児童」から「受けたと思われる児童」にまで拡大。さらに07年5月に成立した改正法では、虐待の疑いが濃い保護者に対し、裁判所の許可を得た上で強制的な立ち入り調査ができるようになるなど、虐待事案への早期対応が求められている。