集団関係の中で立場や力の弱い者をターゲットに、精神的・身体的な攻撃を執拗(しつよう)に加えること。いじめは1980年代以降に問題化し、校内暴力が沈静化した83年ごろから注目されるようになった。85年には発生件数がピークに達し、いじめに起因するとみられる自殺も9件を数えた。93~94年のいくつかの深刻な事件以来、衆議院文教委員会での「いじめ問題集中審議」、旧文部省の「いじめ対策緊急会議」の緊急アピールと報告等、対応が活発化した。旧文部省の「児童生徒の問題行動等に関する調査研究協力者会議」は、96年7月に「いじめの問題に対する総合的な取り組みについて」を公表し、いじめ対策として、家庭や地域との連携や学校全体での対応の重要性を指摘し、学級編成替えや転校措置を提言。学校でのプログラム開発だけではなく、日本版チャイルドラインなど、民間の相談活動の試みも続けられている。近年減少傾向にあるいじめの発生数は、2003年度に8年ぶりに増加したが、翌年度には再び減少し、05年度にはさらに前年度比7.1%減の2万143件となった。06年10月には、北海道滝川市と福岡県筑前町で小中学生がいじめを苦にした自殺が発覚。にもかかわらず、文部科学省の全国統計では、いじめによる自殺の件数が7年連続ゼロだったことが指摘された。いじめ自殺予告を書いた手紙が文部科学大臣あてに届くなど、事態を深刻に受け止めざるを得ない出来事が重なり、いじめ把握に努める自治体が増加。文科省のいじめ定義も変更され、06年度のいじめの認知件数は12万4898件に達した(国立・私立学校を新たに含む)。いじめが社会的・統計的にどのように定義されるかによって調査結果が大幅に異なる点をふまえ、調査の信頼性と意義に疑問を呈する識者も少なくない。12年には前年秋の中2男子のいじめ自殺事件(大津市)が問題となり、市教育委員会の隠蔽体質等が問われることになった。なお、11年度の小中高校生の自殺者数は前年度比28%増の200人に達している。